【ブリックマン1 BBLターンキー解説ブログ!!】/Blichmann 1 BBL Pilot System

2020年5月20日

【ブリックマン1 BBLターンキー解説ブログ!!】/Blichmann 1 BBL Pilot System

Blichmann 1 BBL Pilot System 過去20年間でアメリカン・ホームブルーイング界に最も多大な影響を与えたメーカーといえばBlichmann Engineering社であることに間違いはない。

創業者のJohn Blichmannは地元インディアナ州が誇る世界的建設機械メーカーであるCaterpillar社で長くエンジニアとして勤めた後に、2001年趣味のホームブルーイング向けの専門機材メーカーを立ち上げた。

クラフトビール 設備 Blichmann

当時、ホームブルーイング機材と言えばターキーフライヤーと呼ばれる七面鳥を揚げる巨大な寸胴鍋やパブやレストランから半ば盗みとったビアケグをBKやMTに改造したりと、流用品にDIYを施して使用するのが一般的だった。

もちろんそれが「自家醸造」の醍醐味の一つでもあり、それによって醸造へのより深い理解が得られることは間違いがない。

RIMSやHERMSにしても大型醸造機器では起こり得ない状況をいかに解決するかという試行錯誤の中から生まれた方式だ。

しかし、そんな中からやがて醸造専用に設計された機材を使って、より高度な醸造に集中したいと思う気持ちが出てくるのは当然だろう。

Blichmann Engineering社はホームブルーイング専用機材、いわいる「Purpose built」(目的志向)な製品群をもたらしたほぼ初めてのメーカーだ。

クラフトビール 設備 BlichmannこれまでBeerGunやRipTideポンプなど、数々の革新的な独自設計のアイテムを世に送り出してきたBlichmann Engineering社だが、中でも「Boiler Maker」とその関連製品はホームブルーイングのクォリティを一気に引き上げた歴史的な醸造機器と言える。

Boiler MakerはHLT,MT,そしてBK向けのステンレス・ケトルだが、ステップド・ボトムやケトル直付のサイトグラス、底部スレスレに達する専用ディップ・チューブ、鎧窓型のfalse bottomなど数々の新機軸の設計がなされており、初期型の製造開始から15年近くがたった現在でも、未だにこれ以上のホームブルー・ケトルは見つからないと言われるほど伝説的な製品だ。

通常、鍋のハンドルは正面から見て左右についているものだが、これを前後に持ってきたのもBlichmannだった。

クラフトビール 設備 Blichmannクラフトビール 設備 Blichmann

普通の鍋ではハンドルは持ち運びが目的だが、底部近くにポートがあるブルーイング用のケトルではハンドルはむしろ残った液体をそのポートから出すことが目的なことが多い。

そのため、ハンドルの取り付け位置をポートの方向と合わせることで、簡単にケトルを傾けることができ、排出が容易になるわけだ。

またMTにおいてラウタリング時に必要になるFalse Bottomは、普通は単純なパンチホールか、スリット式が多いが、Blichmannは無数のコイン状押抜き加工を行ったステンレス板を採用。

これによりスタックをほぼ完全に排除した驚異的なラウタリング性能を達成している。

そのBlichmann Engineeringが提供するのがこの1BBL Electric HERMS Pilot Systemだ。

クラフトビール 設備 Blichmannクラフトビール 設備 Blichmann

SSBやSpikeのように専用設計ではなく、基本的にBlichmannの既存の機材を組み合わせたものだが、その分価格は他の半分以下。

しかし、核となる三台のBoilerMakerを含め個々の機材はどれも既に高い評価を得た信頼の製品ばかり。

HLT、BK共に熱源はシーズ・ヒーターによる電熱式。SSBやSpikeとは違い、ケトルの内周をコイル状に走るシーズ・ヒーターはその形状からWhirlpoolによるTrubコーンを邪魔しない設計となっている。

シーズ・ヒーターはBlichmannの最新のコントローラであるBrewCommannderがコントロール。

タッチパネル式のこのシステムは高度なアルゴリズムを使用し、複数の温度設定が可能であり複雑なステップマッシュや温度勾配設定を可能にしており、単一の目標温度設定しかできないSSBやSpikeのPIDに比べ醸造プロセスそのものをよりきめ細やかにコントロールする秀逸な製品だ。

MTの温度管理はHERMS方式を採用。HERMSはHeat Exchange Ricirculate Mashing System(熱交換式再循環糖化システム)の略。

SSBやSpikeが採用するRIMSはシーズ・ヒーターの入ったパイプ内に麦汁を循環させ温度維持やステップマッシュを行うが、HERMSは同じくMTからポンプを介して取り出した麦汁をRIMSパイプの代わりにHLT内の熱交換コイルを通すことで同様の温度管理する方式だ。

BrewCommanderはHLTの温度を計測し、指定したMTの温度を予測しHLTの湯温を変化させることで、MTに戻る麦汁の温度を細かく管理する。

RIMSでは中のシーズ・ヒーターに熱を加えすぎると麦汁が瞬間的に焦げてしまうが、HERMSでは湯温で麦汁を温めるため原理的にそのような心配がない。

各ケトル間の麦汁の移動に使用されるのはホームブルーイング界でつとに評価が高いRipTideポンプを使用。

RipTideは同業界で長らく使用されてきた高信頼のMarch 815 PumpをベースにBlichmann独自の改良を加えたもので、ポンプヘッドはサニタリー継手方式によってツールを一切使用せず分解・洗浄が可能であり非常に衛生的なポンプだ。

また、RipTideや各ケトルにはSSBやSpikeのようなバタフライバルブや、ボールバルブといった既存のバルブではなく、Blichmann独自のLinear Flowバルブを採用。

Linear Flowバルブはニードル弁を採用することにより、バタフライバルブやボールバルブでは難しい細かい流量コントロールが可能になっている。

クラフトビール 設備 Blichmann

ラウタリングやスパージングのように的確な流量管理が必要な場面で非常に効果的なバルブだ。

またRipTide同様、ツールなしで簡単に分解が可能であり、内部構造もスムースなため洗浄も非常に簡単になっている。

ケトルが乗るフレームにはすでにパンチホールが開けられており、機材をブルワリーに搬入した後に簡単に据え付けが行える設計になっている。

また、フレームはカート方式であり、簡単に移動ができるだけではなく、個々のケトルがフレームに固定されていないため、必要であればフレームを使用しなくとも自由な配置での使用が可能な点も嬉しい。

MTには廃麦用のマンウェイをつけることが可能だが、SSBで書いたようにこのクラスであれば是非選んでおきたいオプションだ。

写真引用/Pictures: 
https://www.blichmannengineering.com

Jimmy Yamauchi

この記事を書いた人:Jimmy 山内
"アメリカンクラフトビール&ウイスキーアドバイザー"

エディンバラ大学博士課程に在籍中、Scotch Malt Whisky Society 本部に勤務。ウイスキースペシャリストとして本部のバーで働きつつ、樽選定委員として初のジャパニーズウイス キーや1.100記念ボトルなど数多くのウィスキー選定に携わる。現在カリフォルニアワインの主要産地であるサンタ・バーバラに在住し、全米のウイスキーおよびクラフト・ビール関連のビジネスに携わる。アメリカのクラフトビールに徹底的にコミットした「Tokyo Aleworks」の統括プロデューサー。



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