公開日:20/02/25

Cowboy Craft眞壁氏とJimmy Yamauchi氏の次なる挑戦。まずはホームブリューから

Jimmy Yamauchi氏(左)、Ss BrewTech社創設者 / Refuge BreweryオーナーのCurt Kucera氏(中央)、Cowboy Craft眞壁氏(右) 撮影:Refuge Brewery

Cowboy Craft
CEO 眞壁 暁氏

Jimmy Yamauchi氏

「これまでのキャリアをすべて費やして、日本のクラフトビール、特にホームブリューの発展に尽力する決意を固めました」

こう語るのは、カリフォルニア・サンノゼにあるビール醸造機器の輸出代行会社Cowboy CraftのCEO、眞壁暁氏。これまでアメリカのクラフトビール、原料、機材、醸造ノウハウを日本向けに輸出販売しているかたわら、クラフトビール業界の底上げを担って来た眞壁氏の次なる挑戦が明らかになった。彼が次に取り組むのは”先進国では珍しい日本の酒税制度に一石を投ずべく、新たなホームブリュー産業を生み出すこと”だ。具体的にいえば、なんと大胆にも「 日本初のホームブリューショップ兼ブルワリーを設立すること 」だ。

そのプロジェクトパートナーとして白羽の矢が立ったのは、ウィスキーやクラフトビール、ホームブリューイングに精通するJimmy Yamauchi氏。氏は東京に本場アメリカのホームブリューイングを体験しながらクラフトビールが楽しめるブリュワリーを創設。現在は、カリフォルニアの・サンタバーバラから地元ブリュワリーの情報などやクラフトビールにまつわる食文化なども発信する。自宅にもプロ顔負けの高性能醸造機材が完備されており、氏も自家醸造を楽しみ、自家醸造機器にも幅広い知識をもつ。

アメリカのホームブリューイング文化を日本に広めていきたい

「ヨーロッパのブリュワリーからも視察に来るぐらい、アメリカのクラフトビールは世界的に見ても水準が高い。日本のブリュワリーも勿論いいものを作っているのですが、ブリュワリー数400社という規模と自家醸造禁止という背景はどうしても後手の状況を生む。アメリカのクラフトビール業界は6000社以上あり、雇用も関連産業も市場規模も日本のものとは全く違う。アメリカではホームブリューが合法なので、まず消費者達の意識が作り手の立場でビールを楽しんでいることも大きいですね。また、機器が販売されているホームブリューショップは自家醸造に詳しいスタッフに質問ができ、新たなヒントをもらえる、いわゆるひとつのコミュニティとなっている。僕はこのホームブリュー文化を”広める”部分を僕がこれまでのキャリアで培ってきた知識を活かして手伝っていきたいと思っています。日本でのホームブリューショップの開店が目標ですが、オリジナルブリュワリーも作ってブランド群にし、ホームブリュー文化で日常生活を豊かにする場をつくっていきたい」と眞壁氏。

たしかに、ここ近年日本のクラフトビール市場は盛況だ。「COEDO」や「よなよなビール」、フクロウのマークでお馴染みの「常陸野ネストビール」などが有名だろうか。数十年もの間、日本でいう「ビール」とは、国内有数の大手ビールメーカーが製造するピルスナータイプのラガービールのことだった。「ドライさ」(辛口、という大人なイメージ戦略)や「一番で絞った麦汁」(じゃあ二番絞りは美味しくないの?捨てちゃうの?とかの疑問はさておき)などの風味の違いを売りにしているが、製造方法は全て同じ、ピルスナータイプのラガービール一択という状況だった。
また大手ビールメーカーや日本酒メーカーなどもペールエール、IPA(インディア・ペールエール)などのクラフトビールブランドを立ち上げている。キリンが完全出資した子会社スプリングバレーブルワリーの「496」、「八海山」で有名な八海醸造のクラフトビール「ライディーン」などがそれらに該当する。
また、日本でのクラフトビールの盛り上がりにある背景の一つには、海外で本場のクラフトビールの美味しさに気付いちゃった人たちが、日本でブリュワリーを始めているケースも少なくないと眞壁氏は言う。

アメリカのクラフトビール市場規模

アメリカのブリュワリーの数は前述した通り6,000社以上で、市場規模は日本円で2兆3500億円(2016年時点)。クラフトビールはアメリカで一大産業であり、関連産業などでも雇用数の格差、市場の成熟度は日本と比べて歴然としている。眞壁氏は「アメリカのクラフトビールが評価され、アメリカ製の醸造機器が世界でも引く手数多なのは、この巨大なマーケットの中で淘汰されたこと、またその技術水準の高さによるのだと思います。」と分析する。
それと同時に、40年以上も歴史を持ち独自に発展を続けているホームブリュー文化が、その莫大な市場規模を支えていると言っても過言ではない。ではなぜ、そんなにアメリカでホームブリュー文化が発展したのだろうか。

Jimmy Yamauchi氏の自宅にあるホームブリュー機材(左)と出来上がったビールが収められた『ケゲレーター』と呼ばれるビアタップ(右)

アメリカのホームブリューとは?

Jimmy Yamauchi氏の自宅にあるホームブリュー機材(左)と出来上がったビールが収められた『ケゲレーター』と呼ばれるビアタップ(右)

1978年にアメリカで自家醸造が合法化され、それまで車の修理や改造に使われていたガレージが自分だけのブリュワリーとなり、DIY好きなアメリカ人に一気に広まった。同時に、ホームブリューショップも開店し、一大産業に成長した。
サンタバーバラにて自家醸造のクラフトビールを楽しむJimmyYamauchi氏は、醸造機器にも非常に精通している。その知識は驚く程だ。「アメリカのホームブリューショップでは、醸造機器はもちろん、糖度計やイースト菌やホップ、モルトも販売されている。 そして自分が好きな市販のビールを再現できるようなキットも豊富です。作る過程を丸ごと楽しめるというのがホームブリューの最大の魅力ですね。 米国ホームブリュー協会の創設者・チャーリーパパジアン氏が"The Complete Joy of Homebrewing"に記していた
"Relax, Don't worry. Have a homebrew" という有名な言葉が、ブリュワーたちを安心させ、ホームブリューをより楽しめる方向に発展していけたのだと思います。自分が醸造したビールをホームパーティーで友人と楽しむひと時は格別です」と語る。

ホームブリュワリーショップでは、ホップやイースト、フレーバーの違うモルトも販売。撮影:More Beer! & More Wine! (Los Altos)

日本でのホームブリュー産業の可能性

一方、日本でのホームブリューの可能性を探ってみると、まず酒税法が引っ掛かってくる。明治時代に制定した酒税法をそのまま引き継ぎ、先進国と比較してもドイツの19倍、アメリカの9倍など、極めて高い酒税が課せられている状況が産業の活性化を止めている。350ml当たりに占める酒税負担額は以下の通り。

また、酒税法により、1%を超えるアルコール度数の自家醸造は禁止されている。これは、個人家庭でアルコールを作られてしまっては、酒税をとりっぱぐれるからに他ならない。
そして日本でホームブリュー文化が根付かない原因として「言葉の壁」と「機材の輸入がネック」なのでは、と眞壁氏。「アメリカやドイツの醸造ノウハウは、ネットを介してアクセスできるが、日本人は英語にアレルギーがある。これは思いのほか大きい要因で、昨今日本で名をあげているクラフトビールブリュワリーはの中には外国人主導で醸造しているブリュワリーも少なくないことに裏付けられる。そして、自家醸造が禁止の日本で機器産業が発達するわけもない。中国、ヨーロッパ、アメリカからの輸入のほぼ三択。アメリカのメーカーと交渉、契約、荷受け、検品、輸出入通関、納品というプロセスの障壁の高さは明らかです。また、人気のアメリカ機器メーカーはアメリカ国内の需要で手一杯なので、面倒くさい貿易を自社でやる頭は毛頭ないので結果、Cowboy Craft LLCのような会社の存在意義が生まれるのです。多い月ではコンテナを2~3本出荷することもあり、日々増加傾向にある問い合わせ件数から日本で自家醸造したい人が燻っているのは身をもってわかっています。」と分析する。

日本では1%未満の自家醸造は合法ということであり、機材や原料が輸出禁止といった法的規制は存在しない。わかりやすく言えば母体自体が違法な拳銃の「弾」をアメリカより輸出しようとしているわけではないということである。今回のプロジェクトはアメリカ法人であるCowboy Craft LLCが主導で行えるということで、ロジスティックスの面でもメリットが大きいのだ。
Jimmy Yamauchi氏は「先進国で自家醸造が禁止されている国は、日本とアイスランドくらいですね。日本では明治時代から続く極めて高い酒税を国民に課して安定した税収入を確保している一方で、ホームブリュー産業の確立を妨げ、新たな市場の開拓や関連産業の雇用など、多くの社会的ベネフィットを長年見過ごして来ているとも言えます。これまで日本は、アメリカから新しいカルチャーを積極的に受け入れてきた事で、経済成長が国際的に見てもめざましいものとなった。例えて言うなら、ハンバーガーやデニム、スケボーやバスケなど、最近でいえばサードウェーブのコーヒーブームなどの新しいカルチャーが莫大な市場を生み出したように、アメリカの”ホームブリューイング”というカルチャーを丸ごと日本に定着させていきたいのです」と語る。

Cowboy Craft×Jimmy Yamauchi氏のコラボ

Cowboy Craftが中国メーカーと値段で渡り合えているのは、最小のスキームを最小の人数で回しているからである。ビールに関して言えば、アメリカ法人ではTTBの種類輸出販売免許を入手、日本法人では種類の通信販売、小売、卸しを取得。自社完結のスキームを徹底。2020年4月には直営クラフトビール店舗も日本で開店予定だ。またCowboy Craft立ち上げ前には3年間、工作機械の商社の海外営業に従事。貿易実務と輸出入ノウハウ、そして業者のパイプが世界中にある。また、Jimmy Yamauchi氏はアメリカの醸造機器、クラフトビールのみならず酒類全般に精通しており、日米両国におけるブリューイング文化の架け橋の役割を担っており、これほど頼もしいパートナーは居ないと言えよう。
このふたりのもつ強力なインフラ、驚異的な価格性、幅広い知識や人脈をもって挑戦する「日本初・ホームブリューショップの設立」は、莫大な可能性を秘めており、これは日本のブリュワリー産業に一石を投じる起爆剤となるに違いない。

日本初・ホームブリューショップ+ブルワリーショップの開設

「クラフトビールが好きで、ホームブリューに親和性のある感度の高い日本人の客層と、日本に滞在している外国人、特に母国でホームブリューがスタンダードであるバックグラウンドをもつ層をターゲット層にするべく、出店は東京の中心部を考えています。インテリアもサンフランシスコ、シリコンバレーのブリュワリーをイメージしたシンプルな、だけどスタイリッシュな内装がいいですね。または、コンテナーを三つ並べて、タップルーム、ブリュワリー、ホームブリューショップと内装を役割とインテリアを変えてみるのも面白いですね。そしてJimmy Yamauchi氏を交えた定期的なブリューイングスクールを開催したり、ブリュワリーには既に日本で認知度の高いブリュワリーを招致しようと考えており、我々が考えているターゲット層にも非常に満足できるブリュワー同士のコミュニティとなる事は明白です。アイディアは尽きませんね。」と眞壁氏は瞳を輝かせる。
Jimmy Yamauchi氏は「店内で販売されている機器で実際に醸造したビールを試飲できるタップルームでは、1パイント1コイン(500円)でビールを販売してみては。また、石釜で焼いたピザのスライスもワンコインで販売できたら、ブリュワリーとしても丁度良いですね。日本ではLPガスボンベの個人使用が一般的ではなく、家庭用電気も低電圧。キッチン周りも小さめなので、醸造機材も主に小型なタイプを中心に採用することを検討しています。ホップなどの原材料などの販売チャネルは、別で確保していくので、ニーズに答え切れる、そして新たなカルチャーを創造する、大きなプロジェクトとなります」と、興奮を隠せない。
日本に新たなカルチャーを根付かせ、社会に大きなインパクトを与えるであろうこのプロジェクト。一石を投じるだけではなく、日本のビールの歴史に燦然と名を残すであろうことは言うまでもない。

タップルーム(イメージ図)

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メール:info@cowboycraftjapan.com(眞壁)