ホーム・ブリューイングに色々と使える瓶製缶詰のMason Jarだが、実は缶詰の原型にかなり近い。
「缶詰(canning)」はナポレオンが新たな軍携行食を公募懸賞したのが始まり。
密閉容器を加熱殺菌するという今から考えれば当たり前の方法だが、当時の缶詰はガラス製。
Mason Jarが革新的だったのは、キャップをリング状の外蓋と円盤状の内蓋に分けた点。
内蓋を瓶にのせ、スクリューリングで締める。
それを食中毒原因菌の中で最高の耐熱性があるボツリヌス菌が死滅する121℃で15分ほど熱するわけだ。
アメリカの圧力鍋はここまで高温高圧ではないため、専用の鍋を使用する。
加熱後、冷めると瓶内の圧力が下がって内蓋が押し込まれ、密閉完了。
こうなれば外蓋は外してしまおう。これで何年も保存可能な缶詰の出来上がり。
ここで、ホーム・ブリューイングでの具体的な使い方を見ていこう。
数あるMason Jarの使い方の中でも、最もcanning jarらしい使い方がこれ
「Yeast Starter(イーストスターター)」である。
買ってきたままの酵母は量が少なく休眠中のため、麦汁に加えてもしばらくは増殖や活性化に時間を費やしてしまう。
でも腐敗などを考えれば酵母にはすぐにでも活動してもらいたいもの。
そこで仕込みの数日前に麦汁を別途少量用意し、それで酵母を増やしておこうというのがyeast starterだ。
水にモルトエキスを溶かしただけの即席の麦汁だが、雑菌除去のために煮沸、さらに酵母が投入できる温度まで素早く冷やす工程はまさにビールの仕込みそのもの。
2リットル程度とはいえ、本仕込み数日前にこれは結構しんどい。
そこで高濃度の麦汁をMason Jarを使って一気に数本分canningしておこう。
Canningは完璧な滅菌方法だし、自然冷却によって密閉されることで一年以上保存がきく。
Starterが必要になった時はボトルウォーターで希釈して直接酵母を加えて完了だ。
次回のブログでもう少し詳しく説明しようと思う。
この記事を書いた人:Jimmy 山内
"アメリカンクラフトビール&ウイスキーアドバイザー"
エディンバラ大学博士課程に在籍中、Scotch Malt Whisky Society 本部に勤務。ウイスキースペシャリストとして本部のバーで働きつつ、樽選定委員として初のジャパニーズウイス キーや1.100記念ボトルなど数多くのウィスキー選定に携わる。現在カリフォルニアワインの主要産地であるサンタ・バーバラに在住し、全米のウイスキーおよびクラフト・ビール関連のビジネスに携わる。アメリカのクラフトビールに徹底的にコミットした「Tokyo Aleworks」の統括プロデューサー。
記事の出典元:酒育の会(Liqul リカル)