クラフトビールをもっと楽しむ上で役に立つ豆知識を小学生でもわかるくらい簡単に解説するこのコーナー!
今回はビールができるまでの、あのゴチャゴチャを世界一わかりやすく説明するために書きました。
色々とビールの製造工程を説明している記事はあるのですが、いまひとつゴチャゴチャ感が散見できるので肉眼で確認できるギリギリくらいまで噛み砕いてドン引きするくらい簡単に解説してみようと思います。
大枠をお伝えするという大義名分のもと、大事な詳細ですら豪快に割愛している部分がございますが悪しからず。
登場人物
ビール博士:ビールに詳しそうなおじいさん。居酒屋のトイレで見かけたソクラテスの名言に心を打たれたことがある。
ビール見習い:好奇心旺盛のビール好き。ニート→自宅警備員→代表戸締り役というなかなかのクズ。
段取り調整係:話が脱線した時にどこからともなく現れるまとめ役。
風の噂① 【酵母ちゃんは糖くんと出会うとドキドキし過ぎてアルコールと炭酸ガスに変えちゃうらしい】
ビール=この4つの原料からできているのじゃ。
①麦:缶ビールのラベルパッケージとかに描いてあるアレ。
②ホップ:緑色の植物。きっと見れば「あー。これね」ってなるやつ。苦味の素。
③水:さすがにこれは必要っぽい。
④酵母:話をややこしくしている張本人。ややこしいので出来れば入れたくないけどそうはいかない。
※他にも色々入れていーけど、入れなくてもいい。
え、アルコールと炭酸って両方ビールに欠かせないアレっすよね!?
その通り。アルコールとか炭酸ガスは後付けで、でき上がったビールに注入しているって思う人がいるみたいだが、正解は酵母ちゃんの赤い実がはじけた時の青春の1ページなのさ。
(コイツ頭大丈夫か)でも最初の4つの原料に“糖”なんて入ってなかったですよね?どうやって2人を巡り合わせるんですか?
まぁそう焦るでない。
(イラッ)
風の噂② 【麦の麦代(ムギヨ)はその身体に酵素という生命を身籠っていたのであった。】
※酵母じゃなくて酵素ね!
麦代もわかっていたのだ。自分のお腹の中の酵素を産まなければ、ビールのある世界は永遠に訪れないことを・・・。そして激しい陣痛が麦代を襲ったのだ。』
・・・ ・・ ・ ピーポーピーポー
医者『患者の浸麦(シンバク)数は?!』
看護師『わかりません!しかし、発芽(ハツガ)熱がすごいです!』
医者『くそぉ!でもオリンピック、焙燥(バイソウ)の内村カッコ良かったな!』
看護師『こんな時に何言ってるんですか!・・・私はテニスの除根(ジョコン)ビッチが負けて、、、ショックです!』
麦代『生まれるぅぅう!!!』
こうして麦代は浸麦→発芽→焙燥→除根というプロセスを経て酵素を無事に出産したのだった。
激しい陣痛を戦い抜いた麦代に、人々は尊敬の念を寄込め『麦芽(バクガ)』というあだ名をつけた。
何かめちゃめちゃな設定だけど結局まだ糖くんのとの字も出てきてないですよ?
・・・・・。
風の噂③ 【麦が麦芽になる過程で生成された酵素は、麦芽に含まれるタンパク質とデンプンをそれぞれ、タンパク質→アミノ酸、デンプン→糖に分解することができる。これを糖化という。】
何かいきなり真面目な説明トーンになったけど。
・・・私にもできることとできないことがあるということだ。
あ、でも糖が出てきた!これで酵母ちゃんと糖くんが出会えてアルコールと炭酸ガスが生まれる!でもアミノ酸とかいうのも出てきたけど・・
アミノ酸は酵母ちゃんと仲のいい友達みたいなもんだ。
また超ザックリ・・・
こんなバカ2人は放っておいてポイントを説明しよう!麦を製麦(浸麦→発芽→焙燥→除根)させて麦芽にすると麦芽の中に酵素が生成されるんだ!麦芽はその後細かく砕かれてお湯と混ぜられる。この麦のおかゆみたいな液体を「マイシェ」と呼ぶんだよ!このドロドロのマイシェの中で何が起きているかというと、麦にもとから含まれているデンプンとタンパク質が、生成された酵素の活躍によってデンプン→糖、タンパク質→アミノ酸に分解されているんだ!デンプンを糖に分解することを糖化と呼び、この工程をザックリ仕込工程って呼ぶんだよ!
風の噂④ 【青春の1ページを人は発酵と呼ぶ】
酵母ちゃんが糖くんと出会ってそのドキドキのあまりアルコールと炭酸ガスに変えちゃうって教えただろ?あの青春の1ページをこの業界では発酵と呼ぶのさ。変わった連中だよ。
※発酵→酵母が糖を分解し、炭酸ガスとアルコール作り出すこと。
(変わってんのはお前だろ)そーいえばホップはいつ出てくるんですか?
・・・ホップはろ過されたマイシェに投入されて終わり。
だんだん面倒くさくなってきてますよね?
糖化が進むおかゆ(マイシェ)の中には麦のカスや固形物が色々浮いているのでろ過しなければいけません。そして、ろ過された綺麗な液体を「麦汁」と呼ぶんだ!この段階でホップは麦汁に投入され、その後麦汁は煮沸させられる。次はいよいよ青春の1ページ!発酵に必要な酵母ちゃんが、糖くんのたくさんいる冷やされた麦汁に投入されるのさ!
何で麦汁にホップが投入された後、煮沸させるんですか?
バカ野郎ぉぉぉぉおお!!!!!
うわっ!なんだコイツ急に!
そんなことも知らんとは豆腐の角に頭でもぶつけてしまえ!ビールの苦味こそホップから来る!ホップはドMだから熱湯を浴びないと苦味を出さないんじゃ!
熱湯?!ホップは上島竜〇なのか!ビールは苦いから美味しいのに、ボクはその理由すら知らなかったなんて・・・。
他にも色々と煮沸させる意味はある。麦汁を殺菌したり、色を付けたり、タンパク質を固めたり、まぁでもそんな細かい話は気にしなくていいよ。
(うわぁ何かめっちゃ大事なこと言ってそう・・・)』
ホップはドMではありません。煮沸されることによってホップに含まれるアルファ酸がイソアルファ酸に変換され、苦味を発するようになります。よくクラフトビールのラベルに書いてあるIBU(International Bitterness Units)とは、国際苦味単位のことで、このイソアルファ酸を測定することにより割り出されているんだよ!
酵母ちゃんが糖くんと会えて発酵できたまでは良かったんですけど、どのくらい発酵期間は続くんですか?
お前さん、エールとラガーって言葉を聞いたことがあるじゃろ?
はい、あります。
あれじゃ。
(もうダメだこの人)
一次発酵期間はビールの種類や使われる酵母によって違うのですが大別すると下面発酵と上面発酵に分けられます。下面発酵は7日間~12日間と長め、上面発酵は短ければ3~5日間のみ。この工程を一次発酵と呼びます。
【一次発酵期間】
上面発酵⇒主にエールビール、20℃前後の高温、短期間発酵
下面発酵⇒主にラガービール、10℃前後の低温、長期間発酵
風の噂⑤ 【悪友ジアセチル、後発酵で散る】
発酵が終わった液体は若ビールと呼ばれるんじゃ。若ビールはお前みたいなもんで何もかもが未熟。香りもなければ味も粗い。ジアセチルみたいな悪友ともつるんでおる。もうどっかに行っちゃえばいい。
いきなりめっちゃディスりますね。誰っすかジアセチルって。
ジアセチルとはビールに悪さしか働かない。忌々しいオレオレ詐欺師みたいなもんだ!
博士、まさか被害にあったんじゃ・・・。
そんなジアセチルも後発酵(熟成)さえすればイチコロじゃ!また酵母ちゃんに食われおるわい。ふふふっ、ふははははっ!!
(とうとうイカれたか。)
一次後発酵でできた若ビールは博士の言うようにまだ未完成です。また、ジアセチルのような異臭の原因物質も含まれています。後発酵(熟成)することにより、異臭が消えるだけでなく炭酸ガスをビール中に溶解させる役割もあります。炭酸ガスは異臭をビール中から揮発させる働きもありますが、何よりビールを特徴づける要因の一つでもありますね!
【後発酵期間(二次発酵)】
上面発酵⇒短期間(数日~1週間)
下面発酵⇒約1ヵ月
後発酵も終わり、いよいよビールの完成ですね!
まだじゃ!!酵母ちゃんをナメるなよ若造がっ!
えっ!いや、酵母ちゃんのこと別にナメてないですけど、どうしてですか?!
まだお前には見えまい。後発酵を終え、修羅場をいくつも掻い潜った酵母ちゃんの邪悪なオーラが。
酵母ちゃんの邪悪なオーラ!?
このまま仮にそのビールを瓶詰して出荷したとしよう。瓶詰後も酵母ちゃんはもちろんビールの中に残潜んでいる。そして酵母ちゃんは本人も意図せずビールを腐らせてしまうのだ!
ビールを腐らせる!?でもどうやって酵母ちゃんだけをビールから取り出すのさ!
後発酵が終わったビールからは品質を保つべく酵母を除去する場合もあります。醸造するビールの種類によって方法は異なりますが熱処理によって死滅させる方法と、ろ過によって取り除く方法とに大別されます。昔は熱処理の技術しかなかったのですが、ろ過の技術が進歩するにつれて熱処理しない=生ビールが造られるようになりました。生ビールって言葉は実はこの工程で熱処理されてないビールってことだったんですね!
ここまでやってようやくパッケージングして出荷となるんじゃ。わかったか三下。ボケ。
ちょいちょい罵声を浴びせるのやめてもらっていいですか。
二人の研究は続く。