※DOとはDissolved Oxygenの略称であり、ビールの液中に溶け込んだ溶存酸素のことを指します。
必読とかタイトルに入れるのは本当に嫌いなのですが、我ながら大事なことを書いたので普通にしれっと入れました。
もし、読んでもらったにも関わらず内容がつまらなかった場合、次回、眞壁とすれ違う時に思いっきり肩パンしてくれてOKです。
一瞬びっくりしますが、反撃はせず、静かに納得します。
はじめに
缶詰め、瓶詰めなど最後のパッケージング工程を考える時、ブルワーはその機械設備にばかり気を取られコールドサイドのプロセスがどれ程までに完成品のDO値(溶存酸素量)に影響するかを軽視しがちである。
DO値(溶存酸素量)を左右する要因は間違いなく最後のパッケージング設備によるところが大きいことに間違いはないのだが、その他にも星の数ほど注意点はある。
ラインの最後、パッケージング工程でシンプルにできる酸素侵入への対応策、DOマネージメントの方法をいくつかご紹介したいと思います。
缶詰め、瓶詰めした後の完成ビールがあなたの目指した品質でしっかりお客様の手元に届くためにも是非とも参考にして下さい。
敵か味方か、ブルワーと酸素
ブルワーにとって敵か味方かの判断が難しいのがこの酸素である。
酵素の呼吸を手伝い発酵のプロセスを活性化させるが、ブライトタンク内では文字通り天敵と化す。
発酵後の全てのプロセスやトランスファーの際に酸素の侵入を許してしまえば、すぐさまビールの劣化、保存期間の減少といった悪影響をもたらす活動を始める。
中でもパッケージングの工程では多くのリスクと常に隣り合わせという認識を持って頂きたい。
缶詰め、瓶詰め、ケグ詰めの時に侵入した酸素は完成ビールに大きな影響を与えることが可能です。
ブルワーとして最高のレシピを目指すのは当たり前だと思いますが、パッケージング工程の適正な方法は二の次と考えるブルワーが多いのも事実です。
レシピや醸造プロセスに気を配り、さらにパッケージングの方法にも最新の注意を払う。
そうすることでビールの保存期限は伸び、何より目指したビールの味わいのまま瓶詰め、缶詰めし保存することができます。
そして、それは最終的にブルワーの自信にも繋がると言われております。
DO(溶存酸素)の基礎知識
DO、DOとさっきからコイツは一体何の記事を書いているんだと思う方もいると思うのでかみ砕いて説明します。
DO(Dissolved Oxygen/溶存酸素)とは水中に溶けている酸素のことであり、もちろん本ブログではビールに溶けている溶存酸素を意味します。
全てのビールにはDOがあり、この値、DO値は少ないに越したことはありません。
「いつ」、「どのようにして」発酵後のビールを扱うかによってDO値(溶存酸素量)は大きく変化します。
この、一連のDOマネージメントはビールの寿命を大きく左右できることからアメリカのクラフトビール業界でもホットな話題となっております。
もし、作ったビールを一週間以内に全てタップルームで売り切ってしまえるのであれば、このDOマネージメントはさほど大事ではないかもしれません。
しかし、どんな形であれ瓶詰めや、缶詰めのパッケージングを考えているのであれば、発酵終了からパッケージングまでの間にどのように酸素が侵入するかを理解し、しっかりDOマネージメントをすることが重要になってきます。
DO値を測定しよう
DO値を測定する作業は正直楽しい作業ではありません。
どのタイミングで測定するか、いかに合理的な方法で数値と傾向を観察するかが正確なDO値を計測するためにはが重要です。
発酵終了からDO値を減らす方法は限らておりますが、増やす方法は無限に存在します。
まず、最初のDO値測定ポイントは主発酵完了後、ドライホッピング前に測定してみて下さい。
計測したDO値は常に記録し、ドライホッピングが終わってからも計測。
この工程がどれ程DO値を増加させたのかもしっかり記録して下さい。
その後、ブライトタンクなどパッケージング前のタンクにビールをトランスファーした時、もう一度DO値を測定してみて下さい。
もし、この時DO値に劇的な増加がある場合、そのタンクはしっかりCO2パージされていたかどうか、ポンプやホースのガスケットから酸素が侵入していないかを見直す必要があります。
几帳面に各ポイントでのDO値の計測結果の記録を付けることで、酸素の侵入源を割り出すことが可能になります。
そして、いざ瓶詰め、缶詰めする際にはもう一度タンク内のDO値を再度計測、さらに充填ヘッドフィラーから出るビールも計測しましょう。
数値を観察し、ポンプとホースから酸素が混入していないかを入念に確認してみて下さい。
さらには一日を通して、温度、カーボネーションレベル、タンク内圧力を計測し記録をとります。
各バッチ毎に一貫性があるかどうかの整合性もしっかり見ていきましょう。
パッケージングの際のDO値
瓶詰機械や製缶機などメーカーや機種によってはありえないDO値の実現をコミットしているものも散見できます。
DO(Dissolved Oxygen/溶存酸素)の値というものは決して一定ではありません。
温度、圧力、パッケージングの前段階での酸素の溶存量、その他様々な要因がDO値に影響します。
また、ブライトタンク、充填ノズルヘッド手前のマニホールドなど多くのポイントにあるビールからDO値を計測することも、DO値が上昇した際、不具合箇所を特定することに役立ちます。
以下、パッケージ後のビールのDO値を低く保つための注意点を箇条書きします。
【ブライトタンク内のDO値の管理】
重複になりますが、パッケージング前のブライトタンク内のDO値はそのまま完成品のDO値に影響を与えます。
【リーク、ホース内空気、隙間の点検】
ブライトタンクから出るホース中にある空気はビールに酸素を混入させる原因になります。また、リテーナなどの固定器具、オーリング、バタフライバルブ、トライクランプ(TC)ガスケットなどの隙間からも酸素は侵入しDO値を上げる原因になります。ビールが漏れやすい箇所からは容易に酸素も侵入しやすいので日々の点検を徹底しましょう。
【ビールの温度】
パッケージングとして瓶や缶に充填前のビールの適切な温度管理は言うまでもありません。泡を成形できてかるよく冷えている温度を設備設置環境で見つけて下さい。(目安:34°F/1°C)
【リンス、サニタイジング】
充填前の瓶、缶の容器のリンス、サニタイジングは重要ですが、サニタイザーの中には含有酸素タイプもあります。また、脱泡、脱気(Degassed)されていないリンス水もDO値を上げる原因になりえます。
【CO2パージ圧力設定】
ビール充填前に施すCO2パージの圧力設定も大事な鍵です。ご存知CO2は重く、丁寧に容器底面部よりCO2を充填、最上部手前で噴出をストップさせます。
【外気接触を回避、ヘッド内残留ビール】
パッケージの際、ビールが外気に触れる機会が多い程、酸素が侵入する機会が増え、DO値は上がりやすくなります。ビール充填から蓋、栓をするまでのサイクルタイムにも注意が必要です。窓を開けて外気を入れること、ヒーターなどの空調を使うことでさえDO値の増加のリスクを生み出します。また、フィルヘッドに含まれるビールや、スクレーパーなども充填サイクルの合間には外気にさらされていることを忘れてはいけません。次のサイクルの開始時に酸素を多く含んだビールを充填しないよう配慮が必要です。
【そして、泡】
泡の蓋を作ることはDOマネージメントにおいて最も有力な手段の一つです。泡と並列して、ビール充填速度、充填ボリュームはパッケージングの際、DOマネージメントにおいて最も気を配るべき項目です。泡なしで素早く充填すればパッケージング機械を効率よく稼働させ、生産性は上げることが可能です。しかし、泡がないことによりDO値は上昇するでしょう。また、アンダーリッドガッシング(Underlid Gassing)という蓋、栓をする前にCO2を充填後ビール上部の泡に吹きかける方法もありますが、これは賛否両論です。CO2噴射圧が強ければ泡を吹き飛ばしてしまい酸素の侵入を許してしまいますし、噴射圧が弱ければ酸素撲滅に至らず終わってしまいます。
【ボトルキャッピング、缶の巻き締め】
瓶であればキャッピング、缶であれば蓋を巻き締めをする際ももちろんスピードが問われます。酸素が入らないよう外気と液面干渉を最小限に抑えつつ行うことが重要です。
DOマネージメントありきのパッケージング方法はビールのレシピ開発と似ています。
勉強、試行錯誤、最適化を繰り返し、DO値の低い最良の方法を導き出す必要があります。
幸運にもアメリカではパッケージング工程でのDOマネージメントは最もホットなトピックの一つ。
ブルワーも細心の注意を払うポイントであり、それに応えるべくアメリカのパッケージングメーカーは日々進化しております。
あなたの最終パッケージング方式が缶、ボトル、クラウラー、グラウラーどんな形態であれ、精密な検査機材と一貫性のある計測方法、酸素侵入箇所の割り出し、トラブルシューティングを繰り返すことでDOマネージメントは完結します。
万全を期してパッケージングされたあなたのビールはどんなにブルワリーから遠い地で飲まれても相応の評価を受けるはずです。
「どのように作られたか」
「どのようにパッケージ(瓶缶詰め)されたか」
「どのように運搬されたか」
上記3つはビールの香りや品質に直結します。
正しいパッケージングトレーニングと熟練のオペレーター、最良のパッケージング設備、そして試行錯誤の積み重ねで織り成すDOマネージメントで最高のビールを最高の品質で世に送り出しましょう。
日本向け/Wild Goose Canning&Meheen Bottling導入サービス
今回ブログで書いたDOマネージメント内容を全て正しくシステムに反映させているパッケージング機材メーカーがWild Goose Canning/Meheen Bottlingとなります。
Wild Goose Canning解説ブログはコチラ
同社はボトリング機材メーカーとして有名はMeheenと2016年に合併。
Meheen製のモジュールをすでに導入しているブルワリーの場合、機種によっては組み合わせて使うことも可能。
納入実績は世界中に500ヶ所を超え、文字通りグローバル展開をしております。
最高峰のボトリングノウハウを持つMeheenと、最高峰の製缶ラインノウハウを持つWild Goose Canning。
日本でもサイズを問わず、ブルワリーにとって強力な助っ人になること間違いありません。
仕様の打合せから、メーカー担当者&エンジニアとの窓口、各種通訳、翻訳、輸出入の手続き、通関対応、搬入・据え付け、さらには貴社ブルワリーでのトレーニングまで、全ての段階で同社のシステムに精通した日本人が徹底的にサポートします。
製缶ライン導入をお考えの皆様、是非一度アメリカ製のWild Goose Canningをご検討されてみてはいかがでしょうか。
アメリカ国内だけでも数多くのブルワリーが当社の製缶ラインを指示、導入しております。