クラフトビール をもっと楽しむ上で役に立つ豆知識を小学生でもわかるくらい簡単に解説するこのコーナー!
今回は、みんな大好きビールの泡にスポットを当ててみました!
大枠をお伝えするという大義名分のもと、大事な詳細ですら豪快に割愛している部分がございますが悪しからず。
登場人物
ビール博士:ビールに詳しそうなおじいさん。居酒屋のトイレで見かけたソクラテスの名言に心を打たれたことがある。
ビール見習い:好奇心旺盛のクラフトビール好き。ニート→自宅警備員→代表戸締り役というなかなかのクズ。
段取り調整係:話が脱線した時にどこからともなく現れるまとめ役。
泡ってそもそも何であるの?
世の中にお酒っていっぱいあるけど何でビールにだけ泡があるんですか?
何だいきなりお前さん。中二病でも患ったか?
いや・・・あの、違います。というかビールの泡って何で白いんですか?クラフトビールってスタイルによって色鮮やかじゃないですか。でもどのビールも泡は決まって白色ですよね。
それは空を泳ぐ雲が白いのと同じ理由じゃ。たくさんの気泡の間で光が何度も乱反射して白く見えるんじゃ。
へぇ~そうなんですね。泡って無くてもぶっちゃけよくないすか?
それは一概には言えんな。国によってもビールの泡については考え方が異なるくらいじゃ。日本ではビールの泡があることで「口当たりが良くなる」、「ビールを空気と遮断し、味の変化を防ぐ」などとよく言われておる。
確かにビールの泡ってシャンパンやサイダーの泡とは違って結構長い時間ちゃんと残ってますよね。そんな役割があったとは驚きです。ふむふむ。
ビールの泡は何で消えないの?
でも何でビールの泡って消えないんですか?
お前さん、界面活性って言葉を知っておるか?
洗剤のCMでたまに聞くワードですね。正直詳しく知りません。
ぶっちゃけビールの泡も界面活性を保った構造になってるから泡が持続するんじゃ。
・・・ほへ?ビールの泡って洗剤ってことですか?
お前さんは今度洗剤でも飲んでみるといい。水だけでは泡立たない理由を考えれば簡単じゃ。水だけでは泡が出来たとしても水分子どうしが引っ張り合って生じる表面張力によってその泡の膜(つまり水の膜)が破れてしまい泡が立たんのじゃ。逆に洗剤が泡立つのは水分子の間に洗剤の分子が入りこむことで水分子どうしの距離が開き表面張力が弱まるからなんじゃ。
博士以外と詳しいんですね色々。じゃあビールの泡の場合はどんな構造になってるんですか?
今さら気付いたかボケめ!
あ、いつもの博士だ。
ずばりビールの泡を形成させているのは麦芽に由来するタンパク質とホップに由来する苦味成分イソフムロン(イソアルファ酸)じゃ。親水性成分を液側(外側)、疎水性成分をガス側(内側)に配列させた形で化学的に安定化し、さらにそれを多糖類の鎖がつなぎ合わせることで泡の立体構造が物理的に安定化することにより泡が消えにくくなって水に溶かしても泡は立つことはない。
・・・・4コマ漫画で説明してください
試しにホップを入れずにクラフトビールを造ってみるといい。泡は立つものすぐに消えおるわい。その逆もしかり、ホップのイソアルファ酸だけど水に溶かしても泡は立つことはない。
麦芽のタンパク質とホップのイソアルファ酸がビールの中で出会うことであんなしっかりとした泡が出来るってことなんですね。
泡は何で消えちゃうの?
博士、そこまでしっかりとした構造になっているのに何でビールの泡は最後には無くなっちゃうの?
そりゃあ恋愛と一緒じゃよ。タンパク質とイソアルファ酸だけがビール中にいるプレイヤーとは限らんじゃろ?
・・・・(プレイヤー?)
泡の関係に亀裂を与えようとするチャラ男はごまんといるが、代表的なのは脂質じゃ。食用油の成分であるリノール酸などの脂肪酸ときたら泡の関係をめちゃめちゃにしおるわい。脂っこいおつまみを食べながらビールを飲んでいたらいつの間にか泡が消えていた経験があるじゃろ?あれは脂質の仕業じゃ。
あ、その経験あります!それって口やコップに着いた脂質が原因だったんですね!
あともう一人、忘れちゃいけない漢(おとこ)がおる。
もう"おとこ"の漢字からしてヤバそうですねそいつ。
それはプロテアーゼさんじゃ。(タンパク質分解酵素)
「さん」付け?!博士、いつも例えを用いて説明してくれるのはいいんですけどたまに現実世界との境を跨いで来るのはやめて下さいよ!読者も混乱します!
熱処理していない生ビールの中には酵母の細胞より溢れ出してきたプロテアーゼがわずかに存在しておる。ビールを保存している間に麦芽由来のタンパク質が少しずつ分解され、泡持ちが悪くなっていくのじゃ。
プロテアーゼによるタンパク質の分解は、製麦工程や仕込み工程でも起こります。大麦に蓄えられているタンパク質を大麦のプロテアーゼでアミノ酸やペプチドに分解することは酵母の栄養源(窒素源)確保に必要なものですが、分解が進み過ぎると泡持ちに必要なタンパク質まで分解してしまいます。
ふ~ん。泡にも色々あるんですね~。
二人の研究は続く。
引用先:「ビールの泡」岡山理科大学 光藤裕之
引用先:「ビールの科学」渡淳二監修 講談社
引用先:キリン品質